待合室


 「老人力」

「老人力」。ひところ、この言葉が流行りました。 1998 年 ( 平成 10 年 ) のころで、流行語大賞こそ逃しましたが、「凡人、軍人、変人」、「冷めたピザ」などと共に新語・流行語トップテンに選ばれています。

ベストセラーとなった赤瀬川原平の著作からとった、この「老人力」。名称ほど格好よいものではなく、一言で言えば物忘れ=「ぼけ」のことと、著者自から解説。ユーモアたっぷりに「老人力」のあれこれを描写しています。年々物忘れがひどくなる筆者など、その着想の奇抜さと明るさに、「これぞ高齢化社会の読本」と大いに共鳴したものです。

あれから 6 年。高齢化は、一段と進みました。総務省によりますと、今年 3 月 31 日現在の日本の総人口 1 億 2682 万 4166 人の 19 ・ 24% が 65 歳以上の高齢者で占められています。

平均寿命も年々伸び続け、厚生労働省が発表した 2003 年の日本人の平均寿命は、女性が 85 ・ 33 歳で 19 年連続の世界一。男性も 78 ・ 36 歳で世界第 3 位。 100 歳以上の高齢者も昨年、過去最多の 2 万 561 人に達しています。

“目出度さ”づくめの中で、昨年 1 年間の自殺者( 3 万 4427 人 ) のうち 60 歳以上の高齢者が 3 分の 1 を占め、厚生労働省が初めて実施した高齢者虐待の全国調査でも昨年 10 月末までの 1 年間で 7781 人が虐待を受けていいました。

こうした悲しいデータが示すように、高齢化の中で、健康や生活に苦悩しているお年よりは跡を絶ちません。医療の進歩が平均寿命を延ばし、高齢化社会をもたらしたとすれば、医療機関は、誰もが願う健やかに老い、明るい老後を保障するために、さらに努力すべきだと痛感しています。

物忘れを「老人力」がついたとユーモアにまぎらわす”健全さ”を持つ高齢化社会が望まれます。 9 月 20 日は「敬老の日」。

 


≪前の記事へ

病院だより
今月号の目次へ