辻本 好子 氏 ささえあい医療人権センターCOML理事長


西村 周三 氏 京都大学大学院経済学研究科教授


高橋 権也 氏 高橋内科医院院長


岡本 豊洋 氏 特別医療法人岡本病院(財団)理事長

 生島 「心あたたまる医療を求めて」のテーマで、これからの医療のあり方をお伝えしたいと思います。辻本さんからどうぞ。


辻本好子 氏

 辻本= 「心あたたまる医療」は、どこかにあるのではなく、医療者と患者が一緒につくっていくことなのです。そのキーワードになるのが、笑顔であり、眼差しであり、言葉です。この 3 つを医療者も患者も心することで、この人に出会えてよかった、そんな気持ちになれるのではないかと思います。会えてよかったということは、患者が最も望んでいる、安心でき、納得できる医療が受けられるということです。賢い患者になることも必要です。賢い患者になるために@病気の持ち主である(自覚)A自分の気持ちを知る(意思の確認)B医療者に思いを伝える(言語化の努力)C一緒に歩む(コミュニケーション能力)D一人で悩まない(相談する人を探す)の 5 つのことを提案します。医療者と患者は立場も役割も異なりますが、一つのゴールに向かって息を合わせて進んでいく、そういう人間関係をつくっていくことが大切です。

 生島= 経済学者の立場から西村先生いかがですか。


西村周三 氏

 西村=  4 点ほどお話したいと思います。住民参加をうながすような病院経営。これが「心あたたまる医療」の重要な一つの出発点になると思います。二番目は、医療負担のことです。厚生労働省の介護保険の見直し案では、施設の質を上げます。在宅介護も今より充実させます。その代わり、もっとお金を沢山払ってくださいという方向にあります。また、混合診療とのからみもありますが、保険外での負担増も増えると思われます。三番目は、私たちは医療に過大な期待をし過ぎていないかということです。実は治せない病気の方が多いのです。治せない病気のとき、医師や看護師が一緒にその痛みを感じてくれて、一緒に治すためのお手伝いをしてくれることが求められます。最後の 4 番目になりますが、人類史上、今日ほど大々的にケアをやりましょうという時代を経験したことはありません。超高齢化社会も最近のことで、どうしたら良いのか分からないのが現実です。そこで、いかに地域でお互いの助け合いのシステムをつくっていくかが非常に重要になっています。岡本病院は、そのための核となる病院だと期待しています。

 生島= 高橋先生には、より良い地域医療のあり方についてお伺いします。


高橋権也 氏

 高橋= よりよい地域医療の環境は疾病予防であり、地域医療機関での適切な病気の治療であり、病後も安心して地域で生活できる福祉政策の充実が求められます。行政は、住民が健康で質の高い生活が送れるよう政策面で指導的な役割を果たし、住民と医療関係者が積極的に協力していく体制が望まれます。病気になった時は、地域の中の信頼できる「かかりつけ医師」に診てもらい、高度な治療をうけられる病院を近くに持つことも重要です。開業医と病院が連携して、地域の健康を守ることが大切です。「かかりつけ医師」は、距離的に近く、いつでも診てもらえる▽訴えを良く聞きしっかり説明してくれる▽治療が難しい場合は、専門医(病院)を速やかに紹介してくれる―などを基準に選んだらよいと思います。


岡本豊洋 理事長

 岡本= 病院の立場から岡本病院がどのような医療を目指しているかを申しあげます。「心あたたまる医療」とは、表現を変えれば、生・老・病・死を含めた「全人的医療」に当たると考えています。全人的医療は、知識や技術に偏ることなく、患者さんの気持ちを汲み、調和の取れた医療を行うことです。それには、患者さんと医療者のパートナーシップが必要であり、地域での医療機関の役割分担・連携も大切です。岡本病院には、「この人は わが子わが親 わが兄妹 医の道はひとつ この心にぞ」を柱とした病院憲章があります。全職員がこの気持ちを大切にして、安全で安心な医療を遂行することを使命と考えています。また、医療現場で必要なことは、心身ともに癒すことです。病気だけでなく“病人”を診ることが大切なのです。岡本では、癒しの接遇として、(患者さんの声に)耳を傾ける、情報を正確に伝えるなどの 6 項目を掲げています。法人設立 50 周年を記念して「大切にします 心と身体 やすらぎを」のキャッチフレーズを創りました。安全安心の医療を提供していくとの思いを込めたものです。

 生島= 医療事故で心掛けておられることは―

 岡本= 迅速な意思決定を行い、起こったことについて、分かりやすく説明し、謝罪することが必要です。社会に対する説明責任を明確にし、信頼回復に努力します。

 生島= 医療制度と医療費の問題で、これから何がポイントになりますか―

 西村= 混合診療(保険診療と自己負担となる保険外診療の併用)がキワードになっています。現在の保険制度だと、厚生労働省が認可していない薬を使うと、他の治療費も保険の適用からはずされ、すべて自己負担となります。そこで、混合医療を認めるようにとの指摘がされています。そこで問題なのは、「新しい薬が出ました。効くかどうか分からないが使ってみますか」といわれたとき、どう応えるかですね。また、どんどん自己負担が増えていくという恐れもあります。混合医療について、認めるか認めないかが議論されていますが、その前に、きっちとしたルールを決めることが肝心です。

 高橋= 混合診療は、皆保険が崩壊していく第一歩ととらえています。保険がきくということは、その薬の安全性と効果を厚生労働省が認めたわけで、今後、そういう安全性と効果の面で検証がないと、PRだけにお金をかけた薬がどんどん出てくるのではないかと懸念されます。

 辻本= 混合診療の問題でも、自分はどうするか考えないといけない。混合診療では、患者の自己決定能力が厳しく求められていきます。孤独にならないため相談者も必要です。

 生島= 最後に「心あたたまる医療」にかける岡本理事長の思いを―

 岡本= 岡本病院ですべての機能を果たすというのではなく、地域の中で病院が診療所がそれぞれの機能を生かし連携して、地域ぐるみの医療供給体制をつくっていきたいと考えています。

 

 
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